ひよっこ作家

おはぎとコーヒー

2023.10.27

 去年の今頃、母と2人でバスツアーに参加した。2人で遠出をするのは2度目だった。

 

 初めて行ったのは滋賀県にあるラコリーナ近江八幡。電車をいくつも乗り継いで行った。出来たてのバウムクーヘンを食べたり、わたしの大好きなホットドッグを食べたりした。そこでふたりで撮った写真には、社会人はなりたてのまだ子どもの顔をしたわたしと、まだ少し若くて元気な表情の母がうつっていた。

 

 バスツアーの行き先は三重県で、御在所ロープウェイや温泉施設に行った。ちょうどわたしの仕事が落ち着いた頃だったので、母とふたりでどこかに行くならこのタイミングかなと思い、わたしから誘った。母は普段、パート先、散歩をしている池、スーパー以外のところには滅多に行かない生活をしているので、このバスツアーをすごく楽しみにしていた。母と駅で待ち合わせて、ツアーの集合場所まで一緒に歩く。集合場所に着くと、もうすでに人が集まっていた。バスに乗ると、ガイドの人がマイクを使って色々喋り始めた。皆、拍手を交えながら話を楽しんで聞いている。昼食はSAで修学旅行生がわんさかいるテーブルの隣で松茸御前を食べ、食後の自由時間では母とふたりで温かいコーヒーを飲んだ。その後ロープウェイ乗り場に向かって再びバスは走る。御在所ロープウェイの鉄塔の高さは日本一を誇るらしい。とんでもなく高く高く登っていくロープウェイ。おっかなくて、乗っている間の半分くらいの時間は目をつぶっていた。山頂の空気は澄んでいて、息を吸い込むと胸が少しひんやりした。

 最後の目的地であった温泉施設では、一緒にバスに乗っていた人と裸で顔を合わすなんて変な感じだな、と思いながらすみっこで入浴した。帰りのSAでは、停車時間15分の、時間が全然ない中だったけれど、母は「せっかくだから食べないと。」と伊勢うどんを急いで食べて、とても満足そうだった。

 

 

 バスは解散場所に到着した。わたしは夫と住む家に帰り、母は実家に帰る。ここから実家までは1時間半くらいかかる。わたしは夫に「〇〇に着いたよ。今から帰るね」と連絡する。

 一人暮らしをしていた頃は、外で母に会ってから別れるのがさみしかった。一人暮らしは気楽で楽しかったけれど、家族の待つもとに帰る母を見ると、自分は都会でひとりぼっちで暮らしている、ということを改めて感じたから。実家で住んでいたときは、家族が多い分時間の自由も効かないし、思うように過ごせないこともあったけれど、両親に守られている中で暮らす安心感が確かにあった。それは、ひとりで暮らすようになって、自分で自分を守って必死に生きるうちに気がついたことだった。時が経ち、わたしは夫の待つ家に帰り、母は、父しかいない家に帰るようになった。父は仕事でほぼ家にいないので、一人暮らしも同然の生活のようだ。立場が逆転して、母は外でわたしに会うとき、少しさみしそうだ。子がもう少し大きくなったら、3人でどこか行くのもいいかなと思う。