ひよっこ作家

おはぎとコーヒー

2023.7.24

 近所の和菓子屋で土用餅を買った。こし餡の中に餅がくるまれている。餡の方か、餅の方か、どちらからかわからないけれど、甘さの先に少しの塩味を感じてすっきりとした美味しさ。この日は暑い中かなりの距離を散歩して、汗をいっぱいかいた日だったので、塩味は体にじんわり染み渡り、疲れが飛んでいくようだ。近々また買いに行きたい。

 

 妊娠前から散歩が趣味で、日常的によく歩いていたので、“臨月になったらよく歩くこと”とよく言われるそれが、あまりわたしには有効ではないようだ。産休に入るまでも、仕事柄よく体を動かしていて毎日1万〜1万5千歩は歩いていたし、休日は2万歩前後歩く日もあった。またありがたいことに、歩き過ぎることでお腹が張ることもあまりなかった。しかし歩くこと、体を動かすことへの耐性がついているがために、散歩だけでは陣痛を促進する効果はあんまり見込めないようだ。(もちろん散歩は陣痛促進のためだけにするものとは思っていない。)

 この間の検診でNSTの検査をしたり助産師さんと話したりした中で分かったことで、散歩に加えて、ストレッチやスクワット、階段昇降をして股関節を緩める動きをすることを勧められたので、ここ数日、無理のない範囲で行っている。階段昇降はマンションの敷地内でできるし、疲れたらすぐに部屋に戻れるので結構気に入ってやっている。引っ越してきたときに、左右と下の階の住人には菓子折りを持って挨拶に行ったが、他の住人はまだまだ知らない人ばかりだ。先日も、はりきって階段昇降をしているとき。階段近くの部屋に住む人が、たまたまゴミ捨てに出てこられたので、こちらから挨拶をすると、戸惑いながら挨拶を返してくれた。朝から汗だくの妊婦が自分の部屋の近くからひょっこり現れたら、そりゃ驚くだろう。ゴミ袋を持ってその人はとんとんと階段を下っていき、わたしも後ろからよちよちと降りていく。わたしとぶつかってしまわないように、1階のところで待ってくれていたようだ。「すみません。」「いえいえ。」わたしと入れ違いにその人はまた階段を上っていく。わたしも折り返してまた上る。せっかくだしちゃんと挨拶をしようと思い、少し急いで上ることにする。その人が部屋に戻られるまでに追いついたので、自分の部屋の号室と名前を伝える。「運動のために階段使わせてもらってて、またうろうろしていると思います、すみません。」同じ階に住んでいるものの、お互いに姿を見たことがなかった者同士だったので、突然現れた汗だくの妊婦であるところのわたしの名前や情報を聞いて、少しほっとしたような表情をされる。その方は名前を教えてくれて、「頑張ってくださいね。わたしもがんばらなくっちゃ」と笑顔で励ましてくれたあと、「4月に旦那が亡くなって今はひとりなんです。ぜひまた遊びに来てください。」そんなふうにも話してくれた。